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2006年08月01日

人類は今滅亡への道を歩いている―20世紀末より21世紀初頭の世界の動きを追って

読者の皆さんはこの標題のテーマを見て、平気の方も居られるでしょうが、その逆に反発を覚えられる方もお出でではないでしょうか。イ)そんな発言をして、何処にどれだけの証拠があって言うのか。ロ)そんな問題を軽々しく言うべきではない。と思う人が大方かも知れません。
この農場便りの前号の第45号にも書いた如く、私は未来学者ではない。世界を股にかけて惑星地球号の環境破壊の状況を専門家として調査して歩く学者でもない。然し、私は黙って居れない。敢えて発言する。“人類は今滅亡への道を歩いている”と。
2日前、私は愛車の赤い軽ジープを運転しようと思って、キーを手に取った途端「アチチー」と言って足元に放り出した。指を火傷したと思った。それは運転台前の直射日光の当る所に、2時間程置いていた。そして部屋に戻って温度計を持ち出し、直ぐ横の畑の土の上に置いた。53℃まで上がった。最近読んだ「World Watch」誌に依れば、稲の開花時に38℃を越すと、受精に著しい影響が出る。地球は今、急速に温暖化が進んでおり「数十年後には今日の地球上の米の大産地で、米の生産が不可能になる」という実験の結果を、アメリカのある大学教授が世界の学会に発表したという。私のこの行為は「タイの今日の酷暑が何度あるかを農場の研修生及びスタッフに教える為の教育的処置」であった。上記の記事に依れば「稲は40℃を越すと受精は不可能」とあった。1980年代以降、世界の米収量が伸びていないのは、この事と関係があると思われる。その間にも人口は年間8500万人も殖えているのに!
熱帯では斯くの如き焼けるような暑さの中でも、直射日光の下で農業をしなければ生きられない。私はこんな自然環境に翻弄される農業と共に60年生きた。日本で60歳まで、その後タイで25年、そのキャリアで私は、標題の「證(アカシ)」を皆様に訴える。
皆さんは何を、誰を信じて「自分は安全である。将来も心配ない。」と言うのですか?最も新しい国連の人口白書には「新しい約束は必要ない。必要なことは公約を守ることである」と書いてあります。毎年サミットで尤もらしい「世界平和、人類生存の存続」を約束します。そして今年も、この様に言っています。「決った事は殆ど守られてないではないか。もう次々に約束の世界会議をやっても意味は殆ど無い!今吾々は今迄約束し、決議した事を、その公約を守ることが必要。第一番に実行することだ!」という国連の人口白書の当初に書かれた文章です。地球温暖化防止の京都会議議定書の主催国の日本が今、全国商工会議や工業連盟の圧力で、反対方向(CO2増加)に進んでいる事をご存知ですか?勿論、アメリカ、中国、インドに至っては、初めから加盟すらしていませんが。

人口問題は周知されているか
驚くべきことに科学界も一般の人々も、地球の長期的な人口扶養力を推計するための、定量化と分析が可能で社会文化的に認められたパラメータの確立作業には、殆ど無関心である。残念ながら、この非常に重要な問題に関してだけは、多くの優秀な科学調査官や公共政策アナリストが(ごく少数の注目すべき例外を除いて)明確かつ率直な見解を示すのをためらっている。理由としては生来の慎重さ、職業的評価への懸念、政治色が強いテーマであることへの懸念などが考えられるが、問題の世界的性質と影響力を考えれば、その最たるものは端的に「規模によるマヒ状態」詰りは圧倒的と思える規模の問題に直面した時に生じる、個人および集団の無力感だろう。
はるか以前に算出された人口扶養力の概算には、当然大きなばらつきがあり、下は10億人未満から上は200億人超まで及んでいる。将来人口の目標値が十分把握されず、これを明確に提示できない状態が続けば、効果的な危機対策の策定が困難となることは言うまでもない。然しながら一部の研究者や専門機関が、世界人口の将来的な見解を展開していることは特筆に価する。これらの予測値は、全て10~30億人の間で設定されている。

このような持続不可能な経済活動によって、人類が地球にかけている過大な負荷がどれほど深刻なものであるか、正確には誰にもわからないが、マティス・ワッカーナゲルと共同研究者のグループは、非常に高度な数値化を試みている。これによると、1999年には人間活動による負荷が地球の再生能力を20%上回っていたという。仮に、この地球への過剰な負荷が年に1%ずつ増加しているとすれば、2003年には24%に達していることになる。地球が私たちの生活を支える能力は、私たちが自然という資産を取り崩すことによって衰えていく。人類は「自然の秩序」から自らを解き放ち、結局は自らの理解を超えた事態をもたらそうとしている。結果は誰にも予測することができない。

以上の文は、アメリカの大学教授が人口学の学術誌に発表したもので「人類が存続する為には新しい考え方が求められる」と提言したアインシュタインの考えを支持し「触らぬ神に祟り無し」「問題からの意図的逃避」「我れ関せず」焉(いずくんぞ)的、人間の狡さから来る「見ざる、聞かざる、云わざる」的考え方が(自分達の問題として解決すべきことを)無期限の延長に押し遣ってしまっていると述べている。そして更に次に続く。

世界人口の抑制化は必然
増加率抑制や安定化では間に合わない
人口政策を政治レベルで阻害している目先の懸念材料もさることながら、向こう半世紀で予測される人口の横ばい状態だけでは、文明を長期的に持続させられない事が次第にはっきりしてきた。つまり、人口と消費の双方を大幅に減らす必要があるのだ。
世界人口が21世紀半ばまでに、90億(かそれ以上)に達するのはほぼ確実とする予測がなされている一方で、長期的に持続可能な地球の人口扶養力は、先進諸国における「十分な」~「それなりに満足できる」生活水準を前提とした場合、20~30億人を大きく超えることはないとみる慎重で科学的な(且つ信頼性が増している)予測も存在する。標準として求められるのがアメリカ並みのライフスタイル(消費レベル)であれば、数値はこれをはるかに下回るだろう。相容れないと思われる、これら2つの展望の間の緊張が高まりつつあることは、過去半世紀で一層明らかになった。 World Watchより

私が今日この面の情報として最も信頼を置くWorld Watch誌の記事に依れば、人類は今のままの人口増と消費のパターン続けることは到底不可能で、両方とも大幅に減らさねば生存出来なくなる。又その減らし方も、今まで通りの抑制方法や自然に安定を待つのでは手遅れになる。地球が養い得る人口は20~30億人が適当と言うのが大方の意見で、現在の65億人では地球がもう1~2個必要となる。それなのに最近の国連の中位推定人口ですら、2050年には89億(現在の1.4倍)になるという。その時は地球が3~4個必要ということになる。もう世界の人々は生半可な人口抑制策ではとても間に合わない。何か今迄経験した事もない強い世界中の申し合わせで早急に手を打つべきである。と言うのがこの文を書いたこの部門の専門家の大学教授の本心である。彼の結びの文は以下の様になっている。

地球が今以上の生活水準で100億,150億、はたまた200億の人口を、無期限に支えられるとの主張が、極めて誤解を招き易いだけでなく、99%間違っているのは明らかである。今日、私達は終りなき経済成長に溺れているが、地球が長期的に持続できる人口扶養力は、物質的・生物学的・生態学的な限界があることを認識する必要がある。大気、水、森林、耕地、漁場などの質及び安定性・持続可能性の維持に不安が高まっている点から判断して、これらの多くが(今は、まだそれを越えていないとしても)間も無く限界に達するのは、先ず間違いない。人口の増え過ぎと資源の過剰消費の相乗効果から生じるダメージは、何時か修復不可能となる公算が大きく、実験しようにも地球はたった1つしかないのだから、人間が慎重にも慎重を期して、出来るだけ細やかに管理するに越したことはないのは自明の理だ。
こうした問題の立証責任は長年、いわゆる新マルサス主義の悲観論者たちが負わされてきたが、そろそろ楽観主義者に肩代わりさせる頃合だろう。彼ら(楽観主義者)は、何を証拠に地球が取り返しのつかない損害を受けることなく、もう2~3世紀持ちこたえると言うのか。今こそ、この極めて重要な、地球的問題に関する考え方を改めるべきだ。

多くの地域(特に降水量の少ない中東及び北アフリカの一部)では、人間が直接に使用したり、農業用水に充てたりする為の淡水が危機的なまでに逼迫している。表流水は往々にして管理がずさんな為、水不足や水質汚染を招く。地下水(地下の帯水層に溜まった雨水)も農業用水の生命線であるが、浪費が半ば日常化している。国連環境計画によると、帯水層は非常に穏やかなペース(一般に年率0.1~0.3%)で涵養されるため、慎重に管理して、地下水資源を過剰使用や枯渇から守る必要があるが、ないがしろにされやすい。インドのタミール・ナドゥ州では、1970年代に灌漑用水の汲み上げ過ぎで、地下水位が25~30m下がった。中国も北京で年に約1m、天津では4.4mの割合で低下しつつある。アメリカでは、涵養率を平均25%も上回る、深刻な過剰揚水が生じている。ネブラスカ、サウスダコタ、コロラド、カンザス、オクラホマ、ニューメキシコ、テキサスの各州にまたがるオガララ帯水層の水量は、1950年頃に比べ33%減少した。同帯水層からは、涵養率の3倍の速さで地下水が汲み上げられている。アリゾナ州には、涵養率の10倍超の過剰揚水が行われている帯水層もある。
灌漑は、十分な淡水資源と揚水・引水に必要なエネルギー(主に化石燃料)があれば、乾燥地帯の農業生産を可能にする。世界の全ての水源から取水された水の約70%は灌漑の為に使われている。この内、凡そ2/3は植物栽培で消費され、取り戻すことが出来ない(蒸発散というかたちで水循環に組み込まれる)。灌漑農業は天水農業よりも水効率が悪く、今後は①灌漑用水資源(表流水・地下水)には限りがある。②経済的にコストが高い。③大量のエネルギーを必要とする。と言った要素が、とりわけ費用を賄えない途上国で、農業灌漑の足かせになるだろう。
中国
多くの国で水状況が急速に悪化しているが、特に中国の急拡大する水赤字は、世界全体に影響を与えずにはおかないだろう。中国における年間1200万人の人口増加、急速に進む都市化、予測される7%の経済成長率、そして食料消費量の着実な増加といった動向からみて、今後中国の水需要が供給を上回り続けることはまず間違いない。同時にこれらの動向は、中国の穀物輸入需要が近々急増し始める可能性があることも示唆する。実際、ここ数年中国の大豆輸入量が急増している。1995年から2000年までに、中国は大豆の自給国から世界最大の輸入国に転じ、今や需要の40%以上を輸入している。中国政府が最近行ったこの他の発表は、政府が長年固持していた穀物自給政策を公式に断念したことを示している。勿論、中国だけが水不足に直面するわけではない。水不足によって穀物輸入が増加しているか、または増加する恐れがある国としては、インド、パキスタン、メキシコがあり、更に数十のより小さな国々も同様の状況にある。然し近い将来、世界の穀物市場を撹乱する可能性を持つ国は、13億人近い人口と、年間800億ドルの対米貿易黒字を持つ中国だけである。要するに、中国における地下水の低下は近い将来、世界の食料価格の上昇につながる恐れがある。

永久凍土激減
温暖化で悪循環(2100年に1/10に)
地球温暖化が今のペースで進めば、2100年には北極域に広がる永久凍土の面積が1/10程度に激減し、生態系や人間生活に大きな影響が出るとのシミュレーション結果を、米大気研究センター(NCAR)などのグループがまとめた。NCARのデービッド・ローレンス博士は「凍土が融けると土の中に固定されていた二酸化炭素(Co2)が大気中に放出されるなどして、温暖化を更に悪化させるという悪循環を招く危険がある」と警告している。グループは、気温変化による凍土の発達や縮小、地表の積雪量なども予測できる気候モデルを開発し、大気中のCO2濃度の増加が、北極域の土壌に与える影響を調べた。Co2濃度が今のペースで増加すると、現在北米やロシアなどにある約1100万平方㌔余の永久凍土が2050年にはほぼ半減、2100年には1/10に当る約100万平方㌔になってしまうとの結果が出た。又凍土中の氷が解け、陸地から海に流れ込む真水の量が2100年には28%増加し、海流などにも影響を与える可能性があることも分かった。グループによると、凍土の減少はトナカイなど北極域の生物の生息に悪影響を与えるほか、建造物の倒壊や、道路陥没などの被害も招くと予想される。凍土からCo2などが放出されたり、凍土地帯に森林が発達して地面が吸収する熱の量が増えたりして、温暖化を加速させる可能性もあるという。
注)永久凍土:高緯度地域や高山帯で、夏でも温度が0度以下になり、少なくとも2年以上に亘って、凍結している土壌。カナダや米アラスカ州、シベリヤなどに分布する。日本では富士山と北海道・大雪山系で発見されている。厚さは数メートルから数百メートルになる場所もある。

土壌劣化が生む悪循環と環境難民
陸地の1/3にも及ぶとされる「砂漠化現象」などの土壌劣化に関し、ドイツ・ボンにある国連大学・環境と人間の安全保障研究所のヤノス・ボガルディ所長は、砂漠化や地球温暖化の影響で、今後住む場所を「環境難民」が大量に発生することを警告、国際的な対策の強化を呼び掛ける。
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―――環境難民とは。
「例えば砂漠化の進行で日々の糧を得る農地を失い、生活が出来なくなって本来の居住地から脱出する人々のこと。政治的な難民や経済難民とは違った概念だ。地球環境の変化によって移住を余儀なくされたこれらの人々は現在、少なくとも1920万人はいると試算されている」
―――今後の見通しは。
「温暖化による自然災害の多発や海面上昇などが、人口が集中している沿岸地域に影響を与え、最悪の場合2010年には5000万人の環境難民が発生する。環境難民の発生は、干ばつや暴風雨などの自然現象に責任転嫁されることが多いが、これは正しくない」
―――深刻な地域は。
「今のところ土壌の劣化が環境難民発生の大きな原因だ。サハラ砂漠以南のアフリカや中国、モンゴルなどのアジアで、過剰な農業開発や放牧が進んだ結果、土壌劣化が深刻化、これが地域の貧困を加速させ、更に過剰な農地開発や放牧の原因になる、という悪循環が進んでいる」
―――取るべき対策は
「土壌劣化や干ばつなどの現状把握は遅れている。世界中の研究者等を統合して国際的な研究と監視のための委員会を組織することを提案したい」。

世界の平均寿命(2003年)
1 2 3 4 5 6 7 10      
日本 アイスランド イタリア フランス オランダ デンマーク 韓国 中国 タイ ミャンマー ラオス
スイス ノルウエー ドイツ
スエーデン   イギリス
82 81 80 79 78 77 74 71 69 57 55

ASEAN+3の1人当たり国内総生産(2003年・単位ドル・世界銀行/国連発表)
日本 シンガポール 韓国 ブルネイ マレーシア タイ 中国 フィリピン インドネシア ミャンマ ベトナム ラオス カンボジア
33713 21492 12634 12435 4187 2305 1100 989 970 717 482 375 315
100 63.7 37.5 36.9 12.4 6.8 3.3 2.9 2.9 2.1 1.4 1.1 0.9

各国の農業データ(2005年世界国勢図界より)
  総人口(千人) GNP(百万㌦) 国民1人当りGNP(㌦) 農業就業人口(%) 農民1人当り農地面積(ha)

日本 127,619 4,360,824 34,180 3 2
中国 1,292,270 1,416,751 1,100 65 1
タイ 63,482 135,877 2,190 54 1
ミャンマー 47,749     69 1
ラオス 5,500 1,945 340 76 1
カンボジア 13,041 4,088 300 69 1
アメリカ 288,369 11,012,597 37,870 2 145
イギリス 59,756 1,680,069 28,320 2 34
カナダ 30,689 773,943 24,470 2 187
ドイツ 82,183 2,085,464 25,270 2 19
フランス 59,486 1,521,613   3 38
摘要  (該当年) 2,003 2,003 2,003 2,003 2,002