病気その一

私は生来虚弱体質で、特に幼少の頃は、病気のデパートみたいに、ありとあらゆる病気を体験した。処が長じて大人になるに付け、健康体を取り戻し、退職後は農業に生き甲斐を見出し、充実した人生を過ごせるかに思えた時期もあった。処が晩年になり、今度は健忘症がひどくなり、間違いが多くなって、周囲の人々に、迷惑を掛けることが増えた。健忘症は脳のシナプスが、退化する為に起きる症状らしく、意外に厄介な病気である。典型的な症状は、直前の行動を忘れる事で、例えば田圃に「クワとスコップ」を持って行ったのに、帰途にはスコップを置き忘れた様な症状で、酷い場合は数週間後に見付けることもある。