P&Pその五

兎に角随筆を書くには、何処かに出掛けるか、誰かに会うかしなければ、新鮮な題材は見付からない。父が頻繁に立ち寄る場所は、大凡決まっていて、玉名民報社の他に、平山耳鼻咽喉科、岡村畳店、そして私が大好きな、玉名駅だった。当時の玉名駅は全てがSL。私は柵から身を乗り出して、貨車の入れ替えをする複雑な手順の作業を、それこそ目を輝かせ乍ら、飽きもせずに見詰めていた。後に機械工学の道に進むことになった原点は、此れだったのかも知れない。蛇足乍ら現在の玉名駅は、当時の面影は殆ど無く、偶に列車が通る位で、寂しい限りと云うしかない。