自転車その三

父の自転車は多分、28インチだったと思う。今は26インチが標準なので、父は大柄だったのだ。当然子供には大きすぎるので、所謂三角乗りをしていた。これは今では曲芸の域だろうが、右手でサドルを掴み、左片手ハンドルで乗っていたのである。そんなサーカスみたいな私の姿を見て、知人の高浦氏が可愛そうに思われたのか、私に運搬車を貸して下さった。運搬車は今で言う業務用自転車である。全般的に車高が低く、後輪は前輪より太く、荷台も大型の、貨物運搬車だった。私は高浦氏のお陰で、自転車に乗れるようになった。