農業と一口に云っても、中身は様々である。対する漁業は海に出て、魚貝類を捕るか、養殖をするとか、加工食品を作るとか、割とわかり易い。処が農業は、林業とも関係が深く、漁業のように単純ではない。即ち、自然に増殖する魚や貝、海藻等を採って加工し、販売すれば利益を得られる訳ではなく、米を例にとれば、種蒔きから育苗、田植、施肥、消毒、除草に加え、近年は著しく増えた、猪等の害獣対策をも欠かせなくなった。私は定年を待たず、早期退職後、米作りに転身して最早十余年が経過した。同僚の多くが、定年まで勤め上げたのに対して、私はきっぱり辞めて正解だったと思っている。何故なれば、頭脳労働から、肉体労働に切り替える時期は、早いほど良く、60歳まで長期間勤め上げた後に、新しい仕事を見出すのは容易ではないからだ。そんなこんなで、今年70歳を迎える私は、毎日成すべきことがとても多い。その一つに養鶏がある。この仕事の歴史は古く、昭和30年代より、延々と続いていると云って良いだろう。というのも、養鶏程に参入し易い職種はないからだ。昔は雛を自ら育てていたが、今や雛は簡単に手に入る。餌は配合飼料で十分。問題は鶏舎の建設位である。処がどっこい、10年ほど前にはイタチが鶏小屋に忍び込み、殆ど全滅の憂き目にあった。更に数年前にはカラスが数羽侵入して、鶏を虐殺された。以降私は超神経質になり、毎日のように鶏舎の内外をチェックし、害獣対策を怠らない。恐らくカラスやイタチから鶏を見ると、ビフテキかケーキに見えるのだろう。そんな毎日の夕方、餌遣りをする。私が鶏舎に行くと、鶏がドッと寄って来て、私のズボンの裾や、手足をつつき回す。勿論親しみを込めて、早く餌を食べたいとねだるのである。鶏は一見しても、どれも同じ顔付なので見分けが付き難い。然しその挙動には個性があり、馴れたら見分けられる。詰まり私との距離感が決まっている。最も親し気に寄って来るのは2~3羽、次に少し距離感を持つ数羽のグループ、そして残りが警戒心旺盛で、遠巻きにするグループ。その差は雛の時代に決まったと思う。私が雛を抱っこしていた鶏は、今も私にすり寄って離れない。私はその鶏の背中をポンと叩いて、挨拶をする。そんな鶏の敵は、カラスと雀である。嘗てカラスが数羽鶏舎に潜入して虐殺された。以降私は金網を全面に巡らし、天井も全て囲った。処がカラスは防げても、今度は雀が侵入。雀はカラスより小型なので、金網の輪を掻い潜り、鶏の餌を失敬する。それに対して鶏は、雀を追い払わない。だから餌の何割かは雀の餌になっている。この対策を現在思案中だが、完全な解決策は見つかっていない。誰か名案をお持ちの方は、是非教えて下さい。終わり