コストダウン

コストダウンと云う言葉は和製英語で、英語ではCost reductionと呼び、生産費(原材料費、人件費その他経費)を引き下げ、利益を上げることを指す。私は22歳から56歳までの34年間、企業人として3社5事業所に勤務したが、設計者として、一から新製品を開発するような華やかな仕事は少なく、大半は既存機種の原価低減、即ち既に発売されている製品の利益率を向上させる為の、コストダウン活動であった。資本主義社会は、絶えざるコストダウン活動をせねば、ライバルから追い上げられるか引き離される、厳しい世界である。中でも電機業界は、自動車業界と並び、花形産業と言われているが、その内実は過当競争で有名な業界でもある。私が関わったコストダウン活動は、エアコンと半導体製造装置で、何れも赤字解消が主目的だった。赤字の要因は、製造原価が高いか、販売管理費が高いかに大別される。前者は設計責任、後者は営業責任であるが、殆んどの場合、企業では製造原価が槍玉に上がり、設計部門にコストダウンの要求が来る。設計担当だった私は、経理から原価表を取り寄せ、それを睨みながら、何処かケチれる所は無いか、探し求めていた。そして辿り着くのは、筐体(外装箱)を薄くしたり、塗装をメッキに変えるような、平凡な着想でしかなかった。
玉名市内を通る国道208号の混雑緩和を目的に、昭和49年に事業化された玉名バイパスが、今年2月26日やっと全線開通した。玉名市寺田から岱明町開田に至る距離8.5km、幅員25.25mの道路で、既に東側4.3kmは、平成19年末から暫定2車線で供用済みだったが、残る西側の4.2kmがこの度完成したのである。事業化決定から既に37年、余りにも永い道程であり、計画時点の予想が大きく外れた失敗作と言える。何故なら東半分は、4車線分の土地を買収し、内中央2車線部の緑地帯と、のり面には多くの高木を植栽し、夜間照明まで付いた超デラックス仕様で、菊池川を跨ぐ橋は2車線なのに、橋脚だけは既に4車線仕様となっている。
それに引き換え後から工事した西半分は、極力コストダウンを計ったのか一本の植栽も無く、市内各地の鉄筋建屋の廃材を利用して盛り土を固め、2車線の片側には(山岳・農村地帯なのに)優に一車線分の幅員を持つ、人も殆んど通らない歩道が設けてある。そればかりなら未だしも、バイパスの分岐点に当たる玉名市寺田と、岱明町開田の交差点を通過する車両の大半が、新バイパスを通らず、旧国道を通るのである。私は定期的に荒尾の味付け海苔工場に、廃材料の昆布と炒り子を貰いに行くので、その帰途分岐点の岱明町開田で、信号待ちをする車を数えるが、バイパスを通る車両は全体の1/3~1/4程度である。これは、多くの車両が玉名市内に立ち寄る目的を持つほかに、旧国道も信号システムの改良のお陰で走り易くなり、朝夕のラッシュ時を除けば、バイパスとの通過時間の差が余りなくなったことが挙げられる。
このことを例示するまでも無く、我国の公共工事は余りにもニーズと乖離している。現在の国道208号線が完成したのが昭和31年(モータリゼーションの黎明期)、そして少子高齢化が進み、人口減少が始まった今年、漸く玉名バイパスの全線開通である。幾らコストを度外視した公共工事と言えども、時代の後追いで道路整備が進む我国の現状は、素人目にも合理性に欠ける。
嘗て、日本経済が絶好調だった時期、米国が対日赤字で悩んだ末、日本に対して輸出競争力を弱める為に、国内投資を促す圧力をかけた。米国の言うことには素直すぎる日本は、この理不尽な要求をまともに受け、現在に至るまで、コストパフォーマンスの悪い、無駄な道路をせっせと建設し続けている。私は、そんなに道路を建設したいのなら、海外で道路建設するか、未整備の農道、林道を整備して欲しいと思う。
と言うのも今年は三度も、片白の田圃に通じる道路で車が脱輪した。こんな細道の整備なら、高価なバイパスの1%も掛からないだろう。然し、何時になるか分からない整備を待てない私は、今日も仕方なく古瓦を軽トラに積み、農道の陥没箇所に投入している。終わり
今夏はパソコンの不具合に加えて何かと忙しく、ブログを書く暇もありませんでした。又ぼちぼち書く積りです。