農業

農業を始めて3年余、日々の生活パターンはサラリーマン時代から大きく変わった。サラリーマン時代は6時頃起床して急いで朝食を済ませ、7時前には家を出る。そして帰宅するのは平均して午後8時から9時前後、遅い時には10時近くになる。そして遅い夕食を済ませて風呂に入り、ちょっとTVニュースを見ると、もう寝る時間が迫る。そんな毎日を34年も続けた。自由時間は休日を除けば殆ど無く、子供が起床する前に出勤し、寝た後帰宅する。それがどうだろう。今の日課は平均して5時半起床、朝風呂に浸かった後、ゆっくり朝食を済ませ、小1時間程新聞やTVニュースを見て、8時頃から農作業を始め、10時のお茶の休憩、昼食休憩は1時まで、そして午後の仕事は3時の休憩を挟んで夕暮れまで。秋の日は短く6時頃には暗くなるので、当然残業も出来ない。そして7時頃夕食を済ませた後、ゆっくりTVを見たり、本を読んだり、メールをしたりして、11時前後に就寝する。一見サラリーマン時代と余り変わらないようだが、一番違うのは昼間の時間の過ごし方である。サラリーマン時代は殆どの時間、椅子に座って過ごしていた。それは通勤途上の車も、自席の椅子も、会議の席も、出張の道中も似たようなものである。お陰で体重は増加し、お決まりの成人病予備軍の仲間入り。
それがどうだろう。農業は基本的には屋外作業、椅子は無い。若し有ったとしても、座ったままでは殆どの仕事は出来ない。従って立ち作業が多い。然も私の場合、毎日数種類の仕事をしているので、移動が結構多くなる。万歩計を付けていないので分からないが、毎日優に1万歩以上は歩いていると思う。(サラリーマン時代は、昼休みに30分位歩いても5000~6000歩にしかならなかった)お陰で毎日、好きなものを腹一杯食事をしつつ、体重はサラリーマン時代より5kgも軽くなり、今年の人間ドックでは、医者から健康のお墨付きを頂いた程である。
農業の仕事は無限にある。私は車庫に小さなホワイトボードを下げて、気付いた仕事を書き留め、済んだら消すようにしているが、常に書く方が多く、完了して消すのが追い付かない。従って、ホワイトボードには何時も沢山の宿題が残った状態になっている。私は何故、次から次へと仕事が発生するのか考えた。そして、次の結論に達した。農業は屋外での植物の育成作業が主体である。それは子育てみたいなものだ。子供は目を離すと何をするか分からないし、怪我や病気はしょっちゅうである。これは農業も然りで、周りの環境は常に変化し、ほって置くと忽ち異常が発生する。今秋は特に雨が少なく、水掛けが日課と化している。水掛けは一度始めたら、雨が降るまで止めてはいけない。植物がそれを当てにして生長しているからだ。然らば最初から水を掛けなければ、野菜は芽を出しても成長しない。これは差し詰め、母乳の出ないお母さんが粉ミルクを与えるようなものだ。私は来る日も来る日も夕刻の小1時間、水道ホースを片手に畑に佇む。そして、段々と来月の水道料金が不安になって来た。それは一昨年、潅水チューブを設置して夜間散水をした時、水道料金が一挙に3倍以上に跳ね上がったからである。そして遂に決心した。最早、何時来るか分からない雨など待てない。ポンプを買って川から水を汲み上げよう。その為には、又例のオークションにチャレンジせねばならない。
私は思う。サラリーマンは、儘ならない人間関係というストレスで、精神をすり減らす毎日が続く。農業はそれが無い代わりに、儘ならない自然というストレスに立ち向かわねばならない。今夜からは、翌日の天気予報を見ないようにしよう。然し、私は夜のNHKの天気予報が毎日の楽しみだったのだ。何故ならば、キャスターが毎晩何故か呼び掛ける、あの半井さんのファンの一人なのである。終わり