少子化

今から遡る事50年、私が小学生の頃、社会科の教科書にはどんな事が書かれていたか?日本は国土が狭い。山国で平野が狭い。食料自給率が低い。その上敗戦で海外領土を失い、引揚者が国内に戻って、ベビーブームも起きたので、人口密度も人口増加率も高かった。私は一人っ子だが、同級生には7~8人兄弟・姉妹は珍しくなく、叔父・叔母と甥・姪が机を並べるような時代だった。一方、食生活は炭水化物偏重で、脂肪・蛋白質の摂取が決定的に不足していた(欧米諸国との比較を棒グラフで示してあった)。そして当時の理想はアメリカ式の、高カロリー、エネルギー多消費の生活であった。それが見事に実現した現在、当時の問題は解決したのだろうか?私は決してそうは思わない。日本は確かに資本主義陣営に属して冷戦を乗り切り、経済もアメリカへの輸出を手がかりに外貨を獲得して、高度経済成長を成し遂げ、先進国の仲間入りを果たした。
その結果が今の日本、今度は少子化が止まらない。流石に政府も危機感を抱き、最近は担当大臣まで設けて対策に躍起となっている。然しこれは、人口増&雇用増∝経済成長でしか国家の将来像を描けない、近代資本主義の欠陥を露呈しているのであって、むしろ時代逆行だと思う。私は50年前の社会科の教科書を、今一度紐解いて見る必要があると思う。果たして現在の少子化はそんなに大きな問題だろうか?自然界に生きる動物社会では、殖えすぎると食料がなくなり、自然淘汰で又適正水準まで少なくなる現象が起きると聞く。これは人類にも当てはまる筈で、寧ろ時代に合わせる人間の巧まざる知恵ではないだろうか?即ち、狭い国土に多くの人々が快適に暮らす為には、人口密度は一定以下でなければならない。今の少子化は、結果としてそれが起きつつあるのではなかろうか?しかも、現代は50年前には想像もしなかった深刻な問題が起きつつある。それは先進諸国民のエネルギー多消費型生活に起因する化石燃料の枯渇や、温暖化等の地球環境問題である。アメリカや中国等が、成長神話から逃れられない現在、これらの問題解決の為には、日本は条件の近い欧州諸国と手を携えて世界の先頭に立つ必要がある。
私はその鍵は、日本で今起きている少子化現象を逆手に取り、経済成長のみに依らない社会の仕組み、即ち貨幣経済では計れない新たな価値創造を行い、国民の自己満足度を維持向上させることだと思う。あの江戸時代の大半は人口も横ばいで経済も低成長であったが、人々は文化や芸能を大発展させ、200年以上もの平和な時代を築いた。今の日本の国力を以ってすれば、伝統文化・芸能のみならず、先端技術や生活福祉及び娯楽等で、第二の江戸時代を実現することは決して不可能ではない。それを実現したら日本は文字通り、経済成長万能論からの脱却した、新しい生き方の手本を世界の国々に指し示すことが出来るのではなかろうか?終わり