世界旅行

我家の藤棚に、数年前ツガイの鳩が卵を産み、2羽の雛を育てた。そしてその雛は、成長した今も我家を“実家”と見ているのか、周辺の田畑で食料を調達し、遠くへは行こうとしない。然し2羽の親は、その後2年続きで雛が“猫や蛇”に襲われる不幸に見舞われた。私は堪り兼ねて昨年、外敵の進入防止柵を作ったが、今年は親が遂に諦めたのか、産卵にも来なかった。ひょっとすると別の場所に産卵したのか、離婚したのか、死んだのか謎のままである。
そして、人という動物も何時の時代からか、イスラム社会や一部の原住民を除き、鳩と同じ“一夫一婦制”を基本として社会を構成する様になった。然し、今の時代その基本が“揺らぎ”を見せているように思えてならない。古来、夫婦の第一の目的は“子孫を残すこと”にあったのだろう。昔は人生50年、末の子供が一本立ちする頃には、親の寿命が尽きた。其れが今は人生80年。子供が独立した後に、夫婦のみで過ごす“気の遠くなるような時間”が残されている。
私は、3年前早期退職する時、既に“農業”に第二の人生を懸ける事を決めていた。家内は“サラリーマン”に嫁いだ積りだったので、私の考えに必ずしも賛成ではなかった。そして其れは今も基本的に変わっていない。従って“描く夢”も大きく異なる。家内の夢は本物の“世界旅行”。私の夢は自宅に居ながらの“世界旅行”である。そして私は今も家内から言われる。私が出張で行った“台湾”や“ヨーロッパ”に行きたかったと!然しそもそも“出張に家内を伴う事こそ普通ではない”と言うのが私の考えである。そしてwwoofホストをしている現在、世界中からwwooferの申し込みが相次ぎ、私は“自分の夢”が着実に実現しつつあるのを肌で感じる。向こう3ヶ月をとって見ても、台湾人に次ぎ、オランダ、アメリカ、カナダ(フランス系)、香港(イギリス系)から予約が来ている。
若しこれだけの国々に夫婦で旅行するとなると、幾ら位の費用と時間が掛かるだろうか?其れが自宅で満喫出来る。こんな“幸せなこと”が有って良いものかと!然し、家内はそうは思わない。それは、wwooferは“農業担当”の私を助ける一方で“家事担当”の家内のご厄介になるからである。
人は皆“鏡”という道具を使わねば、自分の“顔”を自分で見ることは出来ない。これは何も顔に付いてのみ言える事ではなく、その“人となり”即ち“生まれつきの性質”についても同様である。そして夫婦は多くの場合、全く異なった家庭環境で生い立っている。私達夫婦の場合も同じ事が言える。家内は一男三女の次女で両親は今も存命、二人の姉妹は何れも米国在住のインターナショナルファミリーである。私は一人っ子で両親は遥か昔に他界。家には外国の匂いすらなかった。違って当り前だろう。又OOからwwooferが来たいと連絡がありました。宜しいでしょうか“奥様”!