アンテナ

私が最後にアパートを建設した場所は、山懐で環境は良かったが電波受信に問題が有った。近隣の家庭のTVアンテナは(熊本の電波発進所のある金峰山とは反対の)福岡の方向を向いていた。私は衛星放送受信用のパラボラアンテナでも付ければ、問題ないと軽く考えていた。然し甘かった。不動産屋さんから「何とかして欲しい」との依頼が来た。そして、アンテナ業者に電波強度の測定を依頼して出したベストの場所は、何と我が“墓山の山頂”(=25基の墓地の横)であった。然し其処は(私が植林した1300本の橡)が生い茂る森である。私は仕方なく辺りの数本の橡を伐採して建設用地を確保した。そして業者に「刈払機での山刈時、誤ってケーブルに触れても、破損しない丈夫なカバーを施した配線工事」を依頼した。業者は重機が使えず手作業で大変だったらしいが、山頂の一角に10m足らずの“私設アンテナ”が完成した。そして受信テストの結果も上々で、問題は全て解決したと私は安心していた。
然し甘かった。次の夏に台風が来たら早速「TVが映らない」とのクレームである。山に登ったら、アンテナが“あらぬ方向”を向いている。早速業者に修正を依頼してOK。ちょっと強い風が吹く度にそんな事が数回あった。私は“其の度”に費用負担を強いられた。何度目かの時に「アンテナの締め付けが甘いのではないか?」とクレームをつけた。業者は反論した。そして突き止めた結論は、周囲の木々の枝が、アンテナに触れる事だった。私は業者を立ち合わせ、更に周囲の木々を切り払った。次の夏が来て、大きな台風の後又クレームが来た。今度は全く映らないとの事である。山に登ったらアンテナが折れて垂れ下がっていた。ヤレヤレである。そして補修が完了したと思ったら又台風が来て、お定まりのクレームも来た。今度は向きがおかしい。私は堪忍袋の緒が切れた。こんな事を繰り返していたら、顧客には迷惑の掛け通しだし、費用負担にも限りがない。私は専門業者を雇った。そして、昔から有って伐採出来なかった墓山を守る雑木を数本、根元から伐採させた。お陰で其の一角は盆地状になった。後述略
その後クレームは来ていない。然し歌の文句ではないが「夏が来れば思い出し」私は憂鬱になる。又“携帯蚊取り線香”を腰にぶら下げて、藪の中で汗みどろの格闘をしなければならないかと!