ミミズとムカデ

私の子供の時代、我家には非常に家蜘蛛(クモ)が多かった。この蜘蛛は電燈の光を求めて集まる小さな虫を主食としていて、今でも少しは居るが、当時は其の数が凄かった。家中に居たと言ったら良い。中には“白い卵の袋”を抱いた不気味な母蜘蛛もいた。私は何故かこれが大の苦手だった。母は「何もしないから平気よ」と言って、手で追い払っていたが、父はやはりこれが苦手だったらしい。然し其の父は、鶏小屋の卵を盗みに来た1mを越すような“青大将”の首根っこを平気で掴んでいた。蛇は当然其の体で父の腕にぐるぐる巻き付く。鶏は大騒ぎとなり巣箱を恐がるようになる。其処で偽卵(見かけは本物そっくりだが瀬戸物製)を巣箱に忍ばせる。蛇は誤って其れを飲む。本物の卵を飲んだ蛇は其れを割る為に“態と”狭い隙間を通り抜ける。然し瀬戸物の偽卵は割れないので、蛇は消化管が詰って死ぬ。と言う“シナリオ”なのだが、私は実際に“其の死体”を見た事はない。一方カエルを主食とする蛇も居る。子供の頃カエルの悲鳴を聞き、外に出てみるとカエルの脚に蛇が噛み付いている。カエルは必死もがくが、蛇の歯は内向きの為に決して外れない。其のうちに徐々にカエルは弱り、飲み込まれて行く。私はカエルの味方になり何度か引き離したりしたが、全く余計な事だった。
一方私は、畑に居るミミズやカエルは平気である。農作業中にミミズが出たりすると、鶏小屋まで掴んで行き、中に投げ込む。鶏は我先に奪い合う。然しムカデは苦手だ。足も多いが、毒を持っていて、過去2~3度刺されたことがある。蜂と同じ“蟻酸”の毒は特に“直り掛け”が痒くてたまらない。私は子供の頃から悪戯が好きで、巣を突いたりして蜂にも何度か指された。一番ひどかったのは、二階の天井裏に巣をかけた、スズメバチに刺された時である。頭を襲われた為、払った指と額を刺され、顔が左右いびつになる位腫れてしまった。余り蜂に刺されるとショックを起こすらしいので、今は注意しているが。
畑や田圃は小さな動物の楽園でもある。多種類の昆虫や爬虫類が共存している。これは無農薬農業の特徴でもある。堆肥にはカブトムシが大量の卵を産み付ける。其の卵は孵化し、幼虫は堆肥を食べて成長する。今年の冬“天地返し”(別ブログ参照)をして堆肥を畑に投入したが、其の中には大量のカブトムシの幼虫が居た。親指よりも太く湾曲した其の姿は異様ではあるが、これは手掴み出来る。然しムカデや蜘蛛を触れないのは、其の足の所為だろう。
私は関係ない事を思い出した。祖母が言っていたという言葉を!「徳永家の“男”は毛が薄い。その代わり“牛蒡”は髭だらけだ!」と。